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品質管理における重要な手段の一つは「傾向管理」です。特に製造業では、製品の品質を測るために製造された製品の基準値や不良数などの特定の要素が存在します。
これらの要素がどのように推移しているのか、その傾向を適切に管理することが重要です。
なぜなら、傾向管理は安定した品質レベルの製品を製造するための有益な手法だからです。
品質管理に関心がある方々や傾向管理や管理図について理解が不十分な方は、ぜひこの記事の解説を参考にして品質管理の向上に役立ててください。
目次
傾向管理とは?
傾向管理とは、特定の物事に対して関連するデータを収集し、その傾向から工程に問題がないかを分析・管理していくことをいいます。
傾向管理は、製造業、サービス業、ソフトウェア開発、プロジェクト管理など、さまざまな分野で広く利用されています。たとえば、製造業では製品の品質や製造過程の安定性を確保するために、製造に関するデータを収集し分析します。
そして、製造過程で製品の不良が発生した場合には、原因を特定してプロセスの改善に役立てます。製造業における傾向管理は、品質の傾向や変動を把握するための重要な手法やアプローチとして、積極的に取り組まれています。
品質にバラつきが出る2つの原因
製造業では決して理想的なことではありませんが、同じ製品を同じ工程で製造しているにもかかわらず、品質の違う製品が出来上がることはよくあります。その原因は、主に下記2つです。
- 偶然原因
- 異常原因
それぞれ順番に解説します。
偶然原因
偶然原因とは、製造工程の状態とは無関係に発生してしまう回避不可能な原因のことをいいます。たとえば、機械の微小な変化や、材料表面の状態などといった、わずかな違いが偶然原因として挙げられます。
これらの原因は、時間や状況によって異なるため、事前に予測するのが難しいです。品質管理では、偶然原因によるバラつきを理解して、制御限界内に留めることが大切です。
異常原因
異常原因とは、製造工程自体が正常ではないことで発生してしまう原因のことをいいます。
たとえば、機械に不具合があるのに無理して使い続けたり、そもそもの製造ルールを無視したりといった、不注意などに起因する原因があります。
前述の偶然原因は、事前に予測や対策が難しいですが、異常原因については、原因に対する対処が可能なため、問題の本質的な改善をすることで解消できます。
管理図とは?
品質管理の分野で使う「QC(Quality Control)の7つ道具」の1つに「管理図」というものがあり、おもに、製造現場などで、品質や工程などの管理状態を目で見て把握するために、この管理図が使われることがあります。
示されるグラフでは、特定の時間やサンプルごとに収集されたデータをもとに、そのパターンや変動が表現されています。
たとえば、製造工程に大きな異常がないかを調べたいとき、横軸に日付や時間、縦軸に不適合品数などの品質に関する項目を入れて、特定の期間内で得たデータをもとに、折れ線グラフを作ってみます。
グラフにしてみると、変化がどこで起きているかが分かりますし、どの範囲で管理が必要となるのかも把握できます。管理図はプロセスの監視や品質改善において重要なツールであり、品質管理の一環として広く活用されています。
管理図で見るべき要素
製品に求められるさまざまな基準値に対して、その状態を分析するために、管理図で見るべき要素が3つ存在します。その要素は下記の通りです。
- 下限管理限界線(LCL)
- 中心線
- 上限管理限界線(UCL)
管理図の折れ線グラフを見たときに、縦軸の目標とする基準レベルが中心線で、基準値の中で最も理想的な値に位置します。中心線から、品質に関する値が許容範囲である上限値と下限値に、それぞれ上限管理限界線と下限管理限界線を定義します。
品質や工程などに関する不良数や製品特有の値などが中心線に近ければ近いほど、管理図としては良い状態であるといえます。反対に、上限管理限界線と下限管理限界線の間をはみ出してしまうような状態であれば、問題ありといえます。
たとえば、電子機器のプリント基板の銅板に導通穴をあける作業を行う工場では、あけた穴の位置が、きちんと許容範囲の位置にあけられた状態で仕上がっていることが大切です。
導通穴の位置は、銅板のセッティング具合や、NC加工機の軸の状態にもよりますが、製造工程でずれてしまい、ずれ幅の許容範囲を超えてしまうこともあります。
このずれ幅の許容範囲を超えた状態が、上限管理限界線や下限管理限界線をはみ出している状態であり、不良や欠陥品の原因でもあります。
管理図の種類
管理図は、大きく下記2つの種類に分けられています。
- 計量値の管理図
- 計数値の管理図
どちらも品質管理に使われる管理図ですが、それぞれ用途に違いがあるので順番に解説します。
計量値の管理図
連続的な数値データ(測定値)を監視するために使用される管理図のことを「計量値の管理図」といいます。製品の寸法、重量、時間、温度など、連続的に測定される数値を対象としています。主に、下記2つのものが存在します。
- X-R管理図
- X-s管理図
それぞれについて順番に解説します。
X-R管理図
平均値(Xバー)と範囲(R)を用いてプロセスの変動を監視するための管理図を「X-R管理図」といいます。Xバーは各サンプルの平均値を表し、Rは各サンプルの範囲(最大値と最小値の差)を表しています。
X−s管理図
平均値(Xバー)と標準偏差(S)を用いてプロセスの変動を監視するための管理図のことを「X-s管理図」といいます。Xバーは各サンプルの平均値を表し、Sは各サンプルの標準偏差を表しています。
計数値の管理図
二項的なデータ(合格・不合格など)やカテゴリカルなデータ(OK・NG、良品・不良品など)を監視するために使用される管理図のことを「計数値の管理図」といいます。おもに、下記の4つのものが存在します。
- P管理図
- Pn管理図
- C管理図
- U管理図
それぞれ順番に解説します。
P管理図
不良の割合や不良率(p)を用いてプロセスの変動を監視するための管理図のことを「P管理図」といいます。各サンプルの不良の数と合格品の数から不良率を計算し、プロットして管理します。
Pn管理図
不良の個数(n)を用いてプロセスの変動を監視するための管理図を「Pn管理図」といいます。各サンプルの不良個数をプロットして管理します。
C管理図
C管理図とは、不良の数を監視するための管理図です。時間の経過ごとの不良の数を把握する場合に使用します。
U管理図
U管理図とは、欠陥品の個数を監視するための管理図です。時間の経過ごとの欠陥品の発生数を監視する場合に使用します。
管理図でどのように異常値を判定する?
管理図を用いて品質管理を行うのであれば、値が上限管理限界線や下限管理限界線を超えてしまう前に、対策を講じておきたいものです。では、限界線を超える可能性のある「異常値」の状態であると判断するためには、どのような場合に注意すべきなのでしょうか。
管理図を見たときに、下記のような状態がみられれば、異常値と判断できます。
- 管理限界線を超えている場合
- 長い連が発生している場合
- 上昇もしくは下降している場合
- 交互に点が上下している場合
- 中心線に寄っている場合
- 連続して領域AやBを超えている場合
それぞれ順番に解説します。
管理限界線を超えている場合
この場合は「明らかな異常値」と判断できる状態であるといえます。なぜなら、既にプロセスがコントロール限界を超えているため、プロセスに何らかの異常が生じている可能性が高いからです。速やかに対応策を立案し、問題を解決することが重要です。
長い連が発生している場合
中心線を基準として片側に連続で並んでいる状態を「長い連」が発生しているといいますが、このような場合も異常値であると判断しましょう。なぜなら、平均値そのものがシフトしてきているからです。
このような事例はあまりないため見落としてしまいやすいですが、もし見つけた場合は、一旦工程を停止して工程を見直してみましょう。
上昇もしくは下降している場合
上昇もしくは下降している場合も、異常値であると判断しましょう。なぜなら、上限管理限界線や下限管理限界線に近づきつつあるからです。まだ許容範囲内ではあるものの、このまま放置すると限界線を超える可能性が高いです。そのため、見つけたら早急に対応しましょう。
交互に点が上下している場合
交互に点が上下している場合、許容値内であれば問題ないように思えますが、異常を疑ってみることをおすすめします。
なぜなら、上記で解説した異常原因によるものである可能性があるからです。
そのため、見つけた場合は異常原因となっているものがないか確認し、もしあれば対策を講じる必要があります。
中心線に寄っている場合
中心線に寄っている場合は、理想的な状態であるとも思われますが、この場合も異常を疑ったほうがよいです。
なぜなら、前述の交互に点が上下している場合と同様、異常原因の可能性があるからです。
連続して領域AやBを超えている場合
管理図の領域AやBを超えている場合も、異常値を疑ったほうが良いです。
なぜなら、プロセスが安定せず、異常原因が頻発している可能性が高いからです。
異常原因の頻発は、不良や欠陥品が多くなりつつあり、すでに顧客から多数のクレームを受けている可能性もあります。
そのため、素早く原因を特定し解決策を見つけて対処すべきです。
まとめ
本記事では、品質管理の1つである傾向管理について、使われるツールである管理図の仕組みや種類なども含めて解説しました。
傾向管理や管理図は、品質管理において非常に重要なツールです。
製造におけるさまざまな基準値の、期間ごとの傾向をつかんでおくことは、品質の維持だけでなく、問題発見や問題解決にも大変役に立ちます。
また、傾向が分かれば、将来的に起こり得る問題にも未然に対処でき、大きなクレームや事故を防ぎ、顧客への信用を維持できます。
本記事で紹介した種類の管理図の中から、自社の製造工程の状況に合わせた管理図を、品質管理に活かしてみることをおすすめします。
ぜひ本記事の内容を参考にして、管理図を有効活用し、不良や欠陥品のない製造現場をめざしましょう。